探偵あるある

探偵が依頼人から「探偵」として認められるために必要な基準とは何か、と問われれば、まず第一に挙げられるのは、どのようなに辛い境遇にある依頼人であろうとも、その人が抱える問題解決のために、探偵自身が「持てる全ての調査力」を駆使して、依頼人の要望に応えるべく調査を遂行することである、と断言できるでしょう。これは至極当然のことであるように思えますが、探偵という職業に携わる者自身が考える常識や判断基準は、どうしても個々によって差が生じるものです。そのため、依頼人が探偵の力量の個人差を全て理解し、その上で調査を依頼するなどということは現実的にはあり得ません。

もし、依頼人が探偵に「できること」を基準に調査依頼を検討するならば、必然的に「全て解決可能な案件」でなければ調査を依頼しないという状況に陥ってしまうでしょう。しかし、現実社会に目を向ければ、依頼人が探偵に調査を依頼し、実際に着手する案件の全てが、必ずしも解決可能であるとは限りません。つまり、ご依頼者の根底にあるのは「解決を望む強い気持ち」であり、「解決不可能であっても、現状を把握し、少しでも事態が好転するよう善処してほしい」という切実な願いなのです。

探偵業界でよく言われる「探偵の調査は、実際にやってみなければ事実がどう転ぶかは判断できない」という言葉は、まさにこの状況を表しています。これは、机上の空論ではなく、実際の現場での経験から導き出された、紛れもない真実なのです。

上記のように「探偵の調査はやってみなければわからない」という点は、多くの探偵が抱く本心であり、探偵業界におけるあるあるな共通認識でしょう。ならば、探偵という職業は「結果を出す力」がなければ務まらないと、誰もが当然のように思うはずです。しかし、現実には、探偵業に従事する現場調査員の調査力は様々であり、依頼者が探偵に望む条件もまた、多種多様であると言わざるを得ません。

探偵事務所のホームページなどで「探偵に必要な条件」を確認すると、「忍耐力や精神力が必要」という言葉を頻繁に見かけます。しかし、この言葉は本当に的を射ているのでしょうか?確かに、探偵の業務が地味で目立たない、いわば裏方の仕事であることが前提であったとしても、依頼人が探偵に「忍耐力や精神力」を期待して調査を依頼しているわけではない、と考えるべきでしょう。

その証拠に、探偵の基本的な業務は、改めて言葉にするまでもなく「依頼人にとっては出来て当たり前」のことであり、例えば尾行や張り込み、情報収集といった業務に、依頼人が特別な期待感を持つことなど、まずあり得ないのです。つまり、依頼人にとっては、探偵が当たり前にこなせる業務は、期待されるものではなく、もはや「空気」のような存在なのです。

このことから、探偵を職業としている人物が、調査現場で実感する多くの経験談やリアルな感想は、必ずしも「依頼人の期待と一致するものではない」と判断できるのです。更に、依頼人が依頼先である探偵に対して「探偵として認めるに値する人物であるか?」を判断する基準や、期待するレベルなどは、依頼者によって大きく異なります。したがって、探偵として当たり前にこなせる業務にすら、正直なところ「自信がない」と思っているような探偵は、「依頼者に認められるレベルに達していない」と断言できるでしょう。

これは、一言で表すならば「依頼人と探偵の感覚の違い」と言えるでしょう。依頼人にとって探偵は、特別な存在として扱われることが多く、まるでドラマや映画に出てくるような、卓越した能力を持つスペシャリストのように期待されることも少なくありません。そのような期待に応えることができない探偵は、現場で惨めな思いを数多く経験することになります。このような状況を打開するには、探偵自身が、常に自身の能力を向上させ、依頼人の期待に応えられるよう努力を続けるしかないのです。

「探偵あるある」とは、このように「実際の探偵にしか理解できない」探偵ならではの常識、あるいは「探偵という職業の裏側」を指す言葉であると言えるでしょう。探偵という職業は、華やかなイメージとは裏腹に、地道で困難な業務の連続であり、その実態は、一般の人々の想像を遥かに超えるものであると言わざるを得ません。だからこそ、探偵は常に自己研鑽を怠らず、依頼人の期待に応えられるよう、最大限の努力を続ける必要があるのです。探偵のプロ意識とは、依頼人の期待を裏切らない、という当たり前のことを、当たり前にやり続けることであると言えるでしょう。

探偵はスペシャリスト

「探偵はスペシャリスト」という期待を抱き、相談にいらっしゃるご相談者やご依頼者は、決して少なくありません。ドラマや映画の影響もあってか、探偵に対して特別な能力を持つ人物、あるいは難事件を鮮やかに解決するヒーローのような存在をイメージしている方もおられるかもしれません。しかし、探偵もまた、生身で等身大の人間である以上、その期待に応えられない部分があるのも事実です。つまり、「正義の味方やヒーローのような、魔法のような解決手法は実施できない」という現実を、依頼を検討されている方に正直に口頭でご説明し、ご理解、あるいは少しがっかりしていただく、という状況は、探偵業務において頻繁に起こり得ることなのです。

探偵として、依頼人の抱える問題に真摯に向き合う姿勢は不可欠ですが、その一方で、依頼人のニーズに安易に「大丈夫です!」「必ず解決できます!」といった言葉で応じることは、非常に危険な行為であると言わざるを得ません。このような無責任な言葉は、一時的に依頼人の不安を和らげるかもしれませんが、それは単なる一時しのぎに過ぎず、根本的な解決には繋がらないどころか、後に大きなトラブルを引き起こす可能性すら孕んでいます。

「大丈夫です!」「必ず解決できます!」といった安易な返答をする探偵は、依頼者の期待値を不必要に高めてしまうという重大な問題点を抱えています。依頼者は、探偵を専門家として頼り、藁にもすがる思いで相談に訪れます。そのような状況下で、「必ず解決できる」という言葉を鵜呑みにしてしまうと、依頼者は過度な期待を抱き、現実とのギャップに大きなショックを受けることになります。調査の結果が依頼者の期待通りにならなかった場合、その失望感は計り知れず、探偵に対する不信感へと繋がることは避けられないでしょう。これは、依頼人にとって精神的な負担となるだけでなく、探偵業界全体の信頼性を損なうことにも繋がります。

さらに、このような探偵は、依頼者の期待値をコントロールすることができず、結果として、調査実施後に様々なトラブルを引き起こす可能性を高めてしまいます。依頼者が抱く過度な期待は、調査の過程で少しでも問題が発生した場合に、探偵に対する不満や怒りへと変わりやすくなります。例えば、調査期間が長引いたり、予想外の費用が発生したりした場合、依頼者は「話が違う!」と不信感を抱き、トラブルに発展する可能性が高まります。また、調査の結果が依頼者の望むものでなかった場合、「最初から期待させなければ良かったのに」と、探偵に対する強い不満を抱くことにも繋がります。これらのトラブルは、依頼者の満足度を著しく低下させるだけでなく、探偵自身の評判を大きく傷つけることにもなります。

探偵の仕事は、依頼人の期待に応えることだけが全てではありません。むしろ、依頼人の期待に応えようとするあまり、安易な約束をすることは、プロの探偵としてあるまじき行為と言えるでしょう。真のプロフェッショナルとは、依頼人の期待を正確に把握した上で、現実的な範囲で可能な限りの解決策を探り、最善の結果に結びつけるために全力を尽くすことなのです。探偵は、依頼人の抱える問題の本質を理解し、その上で、どのような調査が有効であるか、どのようなリスクが伴うのか、といった点を明確に説明する責任があります。依頼人に対して、調査によって必ずしも問題が解決するとは限らないこと、結果が依頼人の望む通りになるとは限らないこと、そして、調査には常にリスクが伴うことを、事前にしっかりと説明し、理解していただくことが、プロの探偵としての責任であり、誠実な姿勢なのです。

安易な期待を抱かせることは、依頼人にとって不利益にしかなりません。それは、依頼人に虚偽の希望を抱かせ、現実的な解決策を見つける機会を奪うことに繋がるからです。探偵は、依頼人が現実を受け止め、問題解決に向けて前向きに進むことができるよう、サポートする役割を担うべきです。そのためには、依頼人の期待をコントロールし、現実的な視点を提供することが重要となります。探偵は、依頼人の希望に寄り添うだけでなく、時には厳しい現実を伝え、依頼人を正しい方向へと導くことも求められるのです。

全ての相談を依頼に結び付けたいという感情から、「調査のリスク説明を抜き」にした相談や受件を行ってしまうことは、「探偵として非常に危険な行為」であり、絶対に避けるべきです。依頼人に対して、調査には常にリスクが伴うこと、結果が依頼人の望む通りになるとは限らないこと、そして調査によって必ずしも問題が解決するとは限らないことを、事前にしっかりと説明し、理解していただくことが、プロの探偵としての責任です。このリスク説明を怠ることは、依頼人に対する不誠実な行為であり、信頼関係を大きく損なう原因となります。

探偵はスペシャリストという期待感を持ってくださる方々に、期待外れな事実、つまり調査の限界やリスクを正直に伝えなければ、後々「インチキ臭い探偵」という、社会的にも最低の評価を受けることになります。探偵業は、信頼が第一であり、一度失った信頼を取り戻すことは非常に困難です。依頼人に対して、誠実に接し、真摯に説明することこそ、探偵として最も重要な心構えであると言えるでしょう。都合の良いことだけを伝え、依頼を無理に獲得しようとする姿勢は、最終的に自身の首を絞めることになります。

更に、探偵が「スペシャリスト」と呼ばれる所以は、単に調査能力が高いだけではありません。依頼人の抱える問題の本質を見抜き、その上で、可能な限り最善の解決策を提案し、実行する能力も求められます。依頼人の期待に応えるためには、高い調査能力に加え、コミュニケーション能力、問題解決能力、そして何よりも、倫理観と責任感が不可欠です。これらの要素が欠けていれば、探偵はただの「調査員」に過ぎず、「スペシャリスト」とは呼べないでしょう。

探偵業は、非常に繊細で、複雑な側面を多く含む仕事です。依頼人の人生や感情に深く関わるため、常に誠実な対応が求められます。安易な言葉で依頼人を惑わしたり、リスクを隠蔽したりする行為は、絶対に許されるものではありません。探偵として、常に依頼人の立場に立ち、最善の解決策を模索し続けることが、プロフェッショナルとしての使命と言えるでしょう。探偵が「スペシャリスト」として社会から認められるためには、依頼人の期待に応えつつ、現実的な視点を持ち続け、誠実な姿勢を貫くことが不可欠なのです。そのような姿勢こそが、探偵業の信頼性を高め、社会的な評価へと繋がる、と言えるのではないでしょうか。

まとめ

探偵が依頼人から「探偵」として認められるためには、単に調査スキルが高いだけでなく、依頼人の抱える問題解決に全力を尽くす姿勢が不可欠です。依頼人は「解決」を強く望んでおり、たとえ完全に解決不可能でも、現状把握と事態好転への努力を期待しています。探偵業界では「やってみなければ結果はわからない」という共通認識がありますが、それは現実的な調査現場での経験に基づいています。探偵は「結果を出す力」が求められる一方、調査員の力量には個人差があり、依頼者の期待も多種多様です。「忍耐力や精神力」は必要条件ではありますが、それだけでは依頼人の期待に応えられません。尾行、張り込み、情報収集などの基本的な業務は「出来て当たり前」とみなされ、依頼人にとっては「空気」のような存在です。探偵自身が持つ「探偵の常識」と依頼人の期待との間にはズレがあり、このギャップを理解し、常に能力を向上させる努力が必要です。

探偵は依頼人から「スペシャリスト」として期待されがちですが、その期待に応えられない現実もあります。安易に「大丈夫」「必ず解決できる」といった言葉で期待値を高めることは、後々のトラブルに繋がる危険な行為です。探偵の役割は、依頼人の期待を正確に把握した上で、現実的な範囲で可能な限り最善の解決策を探し、結果とリスクを丁寧に説明することです。都合の良いことだけを伝えるのではなく、調査の限界やリスクを正直に伝えることこそが、依頼人との信頼関係を築く上で最も重要です。安易な約束は依頼人の機会損失を招き、探偵自身の社会的評価を貶めることになります。探偵は、調査能力だけでなく、コミュニケーション能力、問題解決能力、そして倫理観と責任感を備え、依頼人の期待に応えるために常に自己研鑽を怠らないプロフェッショナルであることが求められます。